掲げた正義を旗めかせ

《国旗》に対する欧州人の感情は、一般の(少なくともおそらくは、戦後生まれの)日本人が《日の丸》について抱く思いとは随分と異なっているように思われる。

国旗とは自らの属する国家を、アイデンティティの起源たる場所を示すものであり、晴れの場に高く誇らしく掲げるべきものである。そして自らの国旗を尊重するのと同様に、他人が掲げる他国の国旗には、最大限の敬意を払わねばならない――このような心境で欧州人が《国旗》に接しているのだとすると、パリ公演中にhydeの示した態度は、日本人が思う以上の重要性を持った、完璧なまでの正解に他ならなかったと言えるだろう。

その一幕とは「Link」の間奏中、スタンディングゾーンの近くに座って投げキスを振りまいていたhydeが、Fanから投げ込まれた小さなイタリア国旗を受け取り、くしゃっとした笑顔を浮かべ、旗にキスをして人波に投げ返したという場面だ。あの時、hydeがそれを「《イタリア国旗》だ」と認識していたかどうかは定かではない。だが、それが何であれ彼はそうしていたであろうし、そんな《祝福のキス》をFanは大喜びで迎えた筈だ。

けれどそれは、他の何でもない、イタリアの緑・白・赤の三色旗だったのである。

それはイタリア人Fanをして、hydeを法王のごとくに崇めさせるのに十分な影響力を持っていた行為であり、他国の人間(特に、隣国としての様々な歴史を持つフランス人にとっては!)からしてみれば、何故あれが自国の国旗ではないのだと、身悶えするほどの悔しさを感じさせるものであっただろう。

(録画及びアップロードの是非については置くとして)後日、YouTubeにその時の映像が上げられているのを見かけたが、イタリア人Fanからのコメントは「熱烈な」という言葉では済まされない程の歓迎、傾倒ぶりであった(素晴らしい! 自分がイタリア人であることを誇りに思う!! これを見て私がどれだけ嬉しいか、きっと想像もつかないでしょうね!! …等)。

《日本凱旋ドーム公演》に行けない海外在住者の負け惜しみで言う訳ではないが、パリでの大いなる成功を経た現在、ラルクは《欧州ツアー》を成功させるに足る下地を築き上げられたように思われる。

2011年と言わず、来年にでもまた、戻ってきてくれないものだろうか。そして今度はフランスだけでなく、色とりどりの旗の元にある欧州各国を回ればいい。きっとそこには、パリで「ハートに火がついた」Fan達が、沢山の愛と共に待ってくれている筈だ。実現の可能性は低いのだろうが、ふと、そんなことを想像してみたりする。