1998年のLバンド

これまでの記事でお気付きかもしれないが、私はLUNA SEAというバンドもかなり好きである。ただし自らをSLAVEとは思っていない。なぜならばことLUNA SEAに関しては、実際にSLAVEである人々の姿や態度を見ると、決して自分はそこまでのDESIREで彼らに対してはいないと思わされるからだ。

だが、LUNA SEAの音楽を好きだと思ったり、メンバーの姿に格好いいと憧れを抱いたり、(次がいつ、どこの空の下なのかは不明であっても)LIVEに行くと楽しいのも事実である。だから、このような言い方が許されるならば、自らを「LUNA SEA Fan」と名乗りたいと思っている。

ちなみにL'Arc〜en〜Cielに関しては、ラルカーだのラルヲタだのらるく中毒だの信者だのなんでも来いだ。HYDEISTと名乗ることでラルクFan(hyde贔屓)も同時に主張できると思っているので、自らを指す言葉に《ディスト》という説明を選ぶことは簡素にして的を射た選択であると思っている。なお、公式FCであるところのHYDEISTには、諸事情により現在は入会していない。LE-CIELについても同様である。このブログはそんな人間の綴る繰言でできている、良くも悪くも。

――余談ではあるが、《HYDEIST》や《S.O.A.P.嬢》以外に、「ラルクFan」のことを指す適切な用語が未だにないのはいささか残念なところであると思う。FCの名称から取るにせよ、「シエル」は既にマスコットキャラの名前としての地位を確立している。何か適当な呼称はないものだろうか。もっとも、そのようなものがないままラルクアンシエルは20周年を迎えてしまいそうではあるので、別になくとも構わないのだろうと言われれば、それまでなのであるが…。

そんな訳で前置きが長くなってしまったが、今回は以下の二冊をテキストとしてみたいと思う。

音楽誌が書かないJポップ批評 47 L'Arc-en-Cielの奇跡(別冊宝島 1399)

音楽誌が書かないJポップ批評 47 L'Arc-en-Cielの奇跡(別冊宝島 1399)


諸事情により(便利な言葉だ)これらのムック本を私が読んだのは過去半年以内、つまりは2008年中のことである。記載内容の信憑性には疑問符を付けざるを得ない箇所もあるにはあったが、概ねの記事を興味深く読むことができた。驚かされたというか、感嘆したのは《hydeは美形》という事実を、(LUNA SEA特集号の記事であっても!)ライターの誰もが全面的に認めていたところである。いやもちろん、それはそうなのだが…つくづく、凄いものだと思う。

ありがたいと思ったのは、バンド・ヒストリーをダイジェストで振り返る《年表》が掲載されていたことだ。クロニクル的に両バンドの歴史を俯瞰し、何よりも思ったことというのは、今からちょうど10年前、

「《活動休止》後の1998年という年を、なんと違うスタンスで迎えていたのだろう」

ということである。1998年といえば、V系バンドブームにまさに火がつき(V系という用語に対するバンドメンバーの意向は、市川哲史氏のごとくこの際気にしないこととする)、両バンドとも自身の過去を越えるセールスを記録、さらには日本のミュージシャンのステータスのひとつである紅白歌合戦への初出場も果たした年だ。世間的なぱっと見では同じくV系ルーツのGLAYと共に、《お化粧バンド》の隆盛の年と見えたことであろう。

けれど両バンドの歴史におけるその年の意味はあまりにも異なっており、その後の両バンドの運命もまた、大きく違ったものとなる。詳細を比較することはしないが、あの年にどちらのバンドも好きだと思っていた私としては、そんな違いをもたらしたものは一体何だったのだろうと、10年後に出会った二冊の本を通して考えてみたくなった。そして読み取った自分なりのキーワードは、《ヤンキー気質》である。

東京・町田のヤンキーと、大阪・なんばの文化系男子。あまりに隔たった存在であるそれらをベースとして形作られていた両バンドの違いは、興味深いことに、共に2008年に発売された、2007年中のLIVEを収録したDVDでも確認できた。

Are you ready? 2007 またハートに火をつけろ!in OKINAWA [DVD]

Are you ready? 2007 またハートに火をつけろ!in OKINAWA [DVD]


《新人》VAMPSの初期キャンペーンのどこかでHYDE自身が語ってもいたが、ラルクのLIVE前の円陣では

「リーダー(tetsu)が色々と喋って、最後にみんなで声を合わせて、やる気のない『イェー』を言う」

というのが定番らしい。全国津々浦々でのこんな模様は、「またハートに火をつけろ!」DVDの特典映像中にも数多く収録されていた。tetsuの語り口はあくまで穏やかであり、軽い笑い声等はあっても、メンバーの誰しも、激しい感情を表に出すようなことはしない。

この《やる気のなさ》、熱い気合や連帯感を表に示すということをしたがらない《インドア派》ラルクの精神性は、《ヤンキー気質》とは決定的に相容れないものなのであろう(ちなみに、VAMPSでは握手をするというのも実に彼ららしいと思った)。

一方、「One Night Dejavu」の特典映像。2007年12月24日、LIVE前の円陣でLUNA SEAのフロントマンたるRYUICHIは、近年の我らがリーダーtetsu並に穏やかに語っている。2000年の《終幕》から7年という歳月を偲べもする映像だ。しかし最後の瞬間、彼と、そして彼ら5人は豹変する。

「きーあぃれっどー!(※気合入れてくぞ!…おそらく)」「ゥオァー!!」

高らかな気合の声と、雄叫び。やはりLUNA SEAはどこまでも、《ヤンキー気質》を持ち続けているバンドであった。変わらぬ魂の姿といおうか、あの映像には、なんとも不思議な感動を覚えられた。

1998年から10年。その形も歩んだ道も異なっていても、今なおどちらのバンドも好きだと思えていることを嬉しく思う。といった強引なまとめ方で、この漫然とした文章を締めてみることとしよう。単にJポップ批評とDVDのリンクを並べてみたかっただけなので、ご容赦を…。