ロシアの大和撫子

えむぞうさんちの記事(id:emuzou:20090118:1232305496)で知ったんですけど、ペアのゆうこちゃんこと川口悠子選手がロシア国籍取得したそうで。ということはつまり、日本国籍から離れたってことですよな。日本人として二十何年生きた後で国籍を変えるというのは、それはもう大きな決断だったことでしょうが…五つの輪、オリンピックに賭けるアスリートの思いの強さを改めて知った気がします。

ロシアは二重国籍OKなんだから(制度が変わっていなければ。以前ロシア人からそう聞いた)、サーシャが日本国籍取ればいいのに! …は実現不可能なんだろうな、きっと。諸般の事情で。大体、そしたら川スミ組は日本代表にならなきゃいけなくなるし、ロシアのスケ連はそんな事態を認めないだろう。

悠子ちゃんは、3月のイエテボリで幸運にも接近遭遇できたスケーターのひとりだったりします。最終日のEXも終わった後、帰りの便までは少し時間があったので、近くの席だったイタリア人のフィギュアスケートFanなマリア(仮名…って断らなくても別にいいんだけど)に誘われて、所謂《出待ち》ゾーンに行ったんですね。アリーナから(おそらくは関係者以外立ち入り禁止の)隣の建物に行くための短い通路というか、裏口というか。

遅い午後は灰色の雪空で、みぞれっぽいものがちらつく天候。同様の出待ちFanは何人かいるものの、主に欧米人で日本人ってか東洋人いないよー(笑) 人波と柵があって、係員がここから先は入るなとか言ってて、ああーなんかライヴハウスみたいーデジャヴーとか思いながら、幸運にも最前で掴めた柵をキープしつつ、ISUの関係者やEXに出てた選手が通り過ぎるのを見たり手を振ったりしておりました。ら。

アリーナの方から川スミ組が出てきたよ! わ、なんか言葉を掛けたい! でも何を??

「おめでとう!」は、好演を見せながらも表彰台には届かず4位だった(ペアの採点にもなんだか疑問はありました。素人目ですが)彼らには適切でないよね。「ゆうこちゃーん!」と呼びかけるのも、本人を目の前にするとためらわれる。それに日本人的には、名前だけ呼ぶってのは何の用? みたいな感じになっちゃうし。

ああでも、日本語で何か言いたい。言わなきゃ。せっかくの機会なんだもの。とりあえず、思い浮かんだ言葉で声を張り上げた。

「お疲れ様ー!」

はっとびっくりした表情をして、悠子ちゃんは一瞬、人波の方を振り向いてくれましたよ。うん…届いちゃうんだ。いくら異国での暮らしに慣れているとは言え、日本人の喋る日本語ってものは、どうしても。

周りに人は沢山いたし、私の存在に気付いたかどうかは判らない。大きな黒い瞳をした、華奢で小柄な彼女はすぐに建物の中へと消えていったけれど、あの時、声を掛けることができて良かったなと、今でも印象深く思い返せます。

たとえ制度上ロシア国籍になろうが、日本人Fanは、勇敢で可憐な日本のスケーターな悠子ちゃんをいつまでも応援してますよ。来年、彼女の望む最高の舞台で、最高のパートナーと最高の演技ができますように。