復活と進撃の歌

「虹」と「READY STEADY GO(以下RSG)」は共に、少し特殊な印象を伴って思い返されるL'Arc〜en〜Cielの楽曲である。

これらのナンバーの共通点とは、(望むと望まざるとに関わらず)《活動休止》期間を経た後にリリースされた第一弾のシングル曲、そして《復活》に当たるLIVEで2回演奏された、しかも2回目は最後の曲として、というものだ。

「1997 REINCARNATION」、記録にも記憶にも残ることとなったラルク初の東京ドーム公演は、彼らのバンド名を冠した曲である「虹」に始まり、「虹」に終わった。後の雑誌でこの選曲が「最初は《復活》の虹、最後は《再生》の虹」といった風に形容されたのは有名なエピソードであるが、それはあの奇跡の晩を、実に正しく説明する言葉であると思う。

再生――それは同時に、突然に閉ざされてしまっていたスターダムの階段を駆け上がるという強い決意、《進撃》の意志を込めた「虹」という意味合いも含んでいたのではないだろうか。以後、1998年〜2000年の日本ミュージックシーンにおけるラルクの怒涛の攻勢については、ここで改めて述べるまでもないだろう。

さて、もう一方の「RSG」である。こちらを「虹」と同様に、復活LIVEで2回演奏された曲、と言い切ってしまうのにはいささか語弊があるかもしれない。厳密に言うならば「Spirit dreams inside」後の長い休止期間からの活動再開は、「Shibuya Seven days 2003」であった訳だし、新曲を初めて披露したLIVEは2003年末の日本武道館、「天嘉 弐 -DANGER II-」であった。

けれどここではあえて、《復活》LIVEは新アルバム「SMILE」をリリースしてより後の「SMILE TOUR 2004」であったのだという説を採ってみたい。ツアーファイナルの場は、国立代々木競技場第一体育館。参戦していた私は、約一年前には同じ場所で「Shibuya Seven days 2003」の不安と歓喜を味わったな、などと思い返しつつ、いたって普通にLIVEを楽しんでいた。

「RSG」も当然演奏された本編、アンコール、そしてメンバーが下がって、EnyaのSEが流れてくる。そこでスクリーンに映された《告知》の中で、何よりも観衆を驚かせたのは「Live in U.S.A.」の情報であったことだろう!(おまけに、アメリカでの「SMILE」リリース決定、ただしインディーズという微妙な告知まであった) 思いもかけぬニュースに騒然となる会場、だがその喧騒をさらに高めたのは、どこまでも《終演後》の空気であるのに、再びステージ上に戻ってきて、そして各々の楽器を手にするメンバー4人の姿であった!!

――嵐のような雰囲気しかもう覚えてはいないのだが、ここで再度「RSG」が一曲のみ演奏され、そして「SMILE TOUR 2004」は真の終演を迎えたのである。

私見ではあるが、正直「RSG」は最初はぴんと来ていなかった。もちろん当時はラルクが新曲をリリースしてくれるという事実が何よりも嬉しかったのだが、《新曲》を耳にしても今いちインパクトが足りなく感じられたというか…。幸い、アニメタイアップの効果もあって世間的には好調なセールスを記録したが(「RSG」時の「鋼の錬金術師」OP映像は虹の演出と言い、秀逸な出来であったと思う。まさにThank you bones.である)、復活第一弾がこれで今後のラルクは大丈夫なのだろうか、と、漠然とした不安を抱いてしまっていたことは、いちFanとして正直に告白しておくべきだろう。

そんな私にとっての「RSG」の評価を一気に上げたのは間違いなく、あの時の代々木での体験である。《ここで立ち止まるような時間は無いさ》、《PLEASE. TRUST ME.》――「どうか僕を信じて!」とhydeは歌う。それは《復活》を遂げたからといって立ち止まりはせずに、新たな挑戦のステージを求めて米国への《進撃》を開始しようとする決心を込めた宣言であるかのように聞こえた。

今にして思えば、2004年のあの《「SMILE」リリース→全国ツアー→米国遠征》という一連の流れこそ、以後も続く海外公演への試金石であったのだろう。

2005年、「AWAKE」リリース。そして中国、韓国でも大規模な公演を行った「ASIALIVE 2005」。そこから2年の時を経て、2007年にリリースされた「KISS」の後には「TOUR 2008 L'7〜Trans ASIA via PARIS〜」、アジアのみならずヨーロッパにまで活躍の場を拡げ、見事成功を収めた海外ツアーとなった。

それでは、次回作は? 《2011 NEXT LIVE 20th L'Anniversary Live》という予告は既に為されている。来るべき20周年にラニバが行われるのだとしたら、その前にオリジナルアルバムを出してほしい、と願ってしまうのは、Fan心理故のないものねだりではない筈だ(実際、2008年現在でシングル曲とアルバム未収録曲が溜まっている)。

という訳で、2011年(もしかしたら2010年後半に?)新アルバムリリース、そして20周年ラニバは日本と世界各国で行われるワールドツアーになる…というのが、妥当な未来図ではないだろうか。ただ《妥当な未来図》などというものが、ことラルクにとって大した意味を持たないであろうことを、幸か不幸か、我々は既に知ってしまっている。いつだってラルクアンシエルのNEXT STAGEは予測不可能だ。だからこそ楽しく、だからこそ追いかけてしまう。

《活動休止》ではないこの3年の間には、「虹」や「RSG」のような立場の曲がリリースされることは、おそらくないであろう。だが、立ち直る為のパワーも、進み続ける為の宣誓も、今のラルクはもう必要としていないように思われる。特別なものなどなくとも彼らは自身を見失わずにいられ、そして彼らが彼らとして在るだけで、世界を熱狂させることも、感動させることもできるのだから。