2008/10/21 Zepp Tokyo

懐かしさと新鮮さ。場数をこなしたことによる充実と余裕。翼を手に入れた開放感。これらが久々に体感したHYDEのLIVEの率直な印象である。

2008年10月21日(火)
VAMPS LIVE 2008
Zepp Tokyo

***

[SET LIST]

Opening Act. MONORAL

01. JESUS CHRIST
02. MADE IN HEAVEN
03. DOLLY

[MC]

04. SWEET VANILLA
05. TIME GOES BY
06. evergreen [DIST.]

[MC]

07. COUNTDOWN
08. IT'S SAD
09. PRAYER
10. PERFECT MOMENT
11. SEASON'S CALL

[MC]

12. LOVE ADDICT
13. HELLO
14. MASQUERADE
15. HIDEAWAY

[MC]

16. MISSION

[MC]

17. Lucy in the Sky with Diamonds (Cover: THE BEATLES, with MONORAL)
18. THE BEAUTIFUL PEOPLE (Cover: Marilyn Manson, with MONORAL)
19. MIDNIGHT CELEBRATION

2F立見席に到着した18時過ぎ、既にオープニングアクトであるMONORALのステージは始まっていた。曲にはあまり詳しくなく、またAnisが髪を短くしていたことを知らなかったので(長髪のイメージがあった)、しばらくはあれがMONORALでいいんだろうかと、いぶかしみながら眺めてしまった。幸いにもAnisが「MONORAL…だよ? 知ってる?」などと、ゆるくも和むMCで自己紹介をしてくれたので助かった。その他は新アルバムの宣伝や、26日に開催される彼らのHALLOWEEN LIVEの宣伝など。楽曲はグルーヴ感がなかなかに楽しい。ハーフという出自故か、英語の発音がとても流暢。

MONORALが下がった18:30頃、ステージに降りた幕の上には5桁でデジタル時刻が映し出される。19時ジャストには《6:60:00》、ここでまず大きな歓声が上がり、1F席の人波は大きく動いたようだったが、あと6分あるので大人しく待つことに。これが《6:65:50》、10秒前からは場内、声を揃えてカウントダウン。そしてもちろん、開始時刻は《6:66:00》!

鳴り響く楽器の音と共に幕が上がっても、もう一重に薄いスクリーンがある。そこに浮かび上がる、ステージの天井部分にぶら下がって落ちてくるHYDEのシルエットという、衝撃的な映像で幕は開かれた。長いゴシックなイントロから始まる一曲目は2年前のFAITH LIVEを思い起こさせる展開、「JESUS CHRIST」だ。バックに映し出される宗教画やステンドグラス、戦争の映像といったものはおそらく「FAITH LIVE」時と同様のものであろう。

攻撃モードのままに「MADE IN HEAVEN」、「DOLLY」。今晩のHYDEの声は良く伸び、それだけでなく深みや感情を十分に味あわせてくれる。シャウト部分も迫力は十分。

「良い子にしてたか、東京〜!?」
「次の曲は、全国どこでやってもあんまり盛り上がらないんだよね」
「こう…(やる気なく手を振る)って、さあ。お遊戯じゃないっての!」

『お遊戯』というフレーズに、この日に観てきたばかりの映画「デトロイト・メタル・シティ」が脳裏に蘇ったことは秘密である。すまない、HYDE。この煽りから「SWEET VANILLA」。個人的にはかなり好きな上に、LIVEの盛り上げ曲だと思っていたので、盛り上がらない、と言われたのは少し意外だった。

続いて「TIME GOES BY」、ようやくVAMPS名義の曲だ。この曲はライヴで聞いても、K.A.Zのギターの響きがとても綺麗だと思った。緑の光に包まれる「evergreen [DIST.]」の静かなイントロに、またやってくれて…と単純に喜ぼうとしていたら、なんとHYDEが日本語で歌っている! 正直、[DIST.]アレンジで日本語詞はないだろう、日本語詞はスローなバラードだから胸に響くのだ、などとひっそり思っていたので、これには本当に驚かされた。そしてそんな私の予想を軽々と上回って、日本語詞で歌われる[DIST.]アレンジもとてもとても、素敵だった。《to me》の繰り返し部分が、《ずっと》と追加歌詞になっているのが嬉しい。

 【英】You've always been so dear to me, to me...

 【日】(その手をつないで)離さないように ずっと、ずっと…

この表記で伝わるだろうか。なお、繰り返し部分を調子を変えて歌うライヴアレンジも、生ならではの醍醐味だと思う。

再びのMC。MONORAL見た? Anis可愛いよね、顔を見て女の子かと思った。という、貴方がそれを言いますか的な。でも変な絵、安産マークを描いていて、こいつ男だなっていう…と、一体それはどういう状況だったのか、気になるばかりである。そして開始時のカウントダウンに触れ、またやってくれる? との煽りから「COUNTDOWN」。間奏の13からのカウントダウンは聞こえなかったのだが、ステージ上で誰かが言っていたのかどうかは判らない。走り出しそうな勢いの「IT'S SAD」に続いては、これも戦争や兵士を思わせる歌である「PRAYER」。ヘヴィな音が心地良い。

少しクールダウンして、「PERFECT MOMENT」。揺れる青色の照明と相まって、水の底にいるかのようだ。見下ろす1Fのフロアでは、スタッフの懐中電灯があちこちで光り…運び出される人間、続出なのだろうか。少し気になってしまった。

面白いことにこの時、照明を落とされてみると、ステージの後方、柱と窓枠の間の剥がれた壁がぼんやりとした白と黒のコントラストのみで浮かび上がり、山がちな海岸線、あるいは湖と小島のようにも見えてきた。バーの看板のような《Vamps》ネオンサインなども光る、夜の路地裏めいた壁を外から見ていた筈なのに、今はまるで、窓越しに遠くの風景を見ているかのような感覚。照明の具合によって、内外の感覚が逆転する。それは前日のVAMPARK時にも覚えた《内と外の混在》という印象を裏付けるものだった。遥かな風景が目の前に浮かぶような「SEASON'S CALL」に続くことも、一層、遠くを見ている感覚を強めてくれる。

けれどまた舞台は《外》へ、ロックに暴れるストリート的な雰囲気に引き戻される展開。「バカになれ!」とのお言葉と、ギターを放して、両腕を頭の上に円く回したサルのポーズで煽って「LOVE ADDICT」。これはとにかくもう、滅茶苦茶に踊るのがなんとも楽しく、手拍子もやらずにはおれない。

「HELLO」ではやはり、こちらが声を上げて歌う部分が多かった。「MASQUERADE」、「HIDEAWAY」と畳み掛けるようにヒートアップした後、メンバーは一旦退場。わんわんとした残響が耳の奥で鳴り響く中、こちらも一息つく。アンコール待ちのコールが「VAMPS!」なのが、短いユニット名を冠したバンドのLIVEならではだと思った。

待機時間はそう長くもなく、メンバー再登場。「ひとつになろう」というMCに「UNEXPECTED」かと思ったのだが、アンコールは「MISSION」から。それからAnisを呼び(他のMONORALバンドメンバーも出てきた)、お待ちかねのビートルズカヴァー、「Lucy in the Sky with Diamonds」。

始まってしばらくは歌うAnisにギターHYDEのステージを眺めていたのだが、2F席の前方が騒がしい? と思ったら、なんとそこにはK.A.Zの姿が!!(右側で鑑賞していた) 右手奥の関係者席の方から入ってきたのであろう。スポットライトに照らされて、一心不乱にギターを弾く姿に、もう釘付けになる他ない。まさか、こんな近くで見られるなんて…! 個人的にはLIVE中の一曲で、こんなにもHYDEhyde含む)の姿を見ていなかったことはないと思う。おかげで逆側に上がっていたJu-kenや、ステージ上でのHYDEとAnisのキスなどを見事に見逃したのだが、後悔はしていないと言い切れるほど、近くで見られたK.A.Zの姿は格好良かった。

続いてはAnisがメガホンを持ち、マリリン・マンソンのナンバー「THE BEAUTIFUL PEOPLE」。戻ったK.A.Zはギターを弾いていたような気がするが、HYDEは水鉄砲、Ju-kenはピコピコハンマーを構えと、実にやりたい放題である(ベースはMONORALのAliが弾いていたのだろう…おそらく)。

MONORALメンバーは下がったものの、そんなノリのままラストは「MIDNIGHT CELEBRATION」。もうもうとスモークが焚かれたり、ワイヤーでぶら下げられた何個もの裸電球が、ランダムな動きでステージ上を揺れ動いていたり、カオス状態に拍車が掛かるのみ。いっそもう、真夜中の狂宴でいいのかもしれないと思う。

演奏を終え、水を投げ、ピックを投げ、メンバーは下がっていく。止まない轟音。最後の最後には、ステージ後方の壁の中央に掲げられていた、捻じ曲がった角の生えた獣の頭の骨が意味ありげに照らし出された。そして…フロアが照らされ、終演のアナウンス。ふらふらする足取りと耳鳴りでZeppを後にする。

考えてみれば、HYDEを生で見るのは2008/5/9のL'7パリ以来である。さらにライヴハウスで、となると、実に2004年のFIRST TOUR 666まで遡ってしまう。そんな私が久々に目にしたHYDEのLIVE姿は、やはりと言おうか、予想以上に楽しく刺激的だった。ありがとうHYDE、ありがとうK.A.Z、ありがとうVAMPS! この辺りについては、翌日分の記事でもう少し詳しく触れたいと思う。

この日の宿泊先である、Zepp Tokyoから徒歩5分のホテルでの一枚。21日のトートは紫、ストッキングも紫(買っていないが)。VAMPADDICTアイシャドー会場限定色とツアーパンフレット「BIRTHDAY」も購入した割に、写真に入れるのを忘れていた…。

22日分のLIVEについての記事はこちら