『僕はここにいる』

「le vert」様の《HYDE/hydeの「愛と死」四部作》な記事を興味深く拝読しまして、語りたくなったので書いてみる。(笑) 新年早々、元旦に立てた目標とは違う更新をしてしまってるところがライネクオリティです。はは。ああでも、REALな「a Paris」紀行の写真は一通りフォトライフの方にアップし終えましたよ!*1

例によっていきなり話が反れてしまってますが、お題は《作詞:HYDEhyde》で《夫/父としての男の「愛と死」の曲》。勝手に拡大解釈して「愛と死」は「生」と表裏一体ってことで、夫/父としての「生」の歌…個人的に、それで一番深いのはL'Arc〜en〜Ciel「TRUST」だと思うのです。歌詞はこちら参照

AWAKE

AWAKE

10thアルバム「AWAKE」*2収録のこの曲は、ラルクアンシエルのひとつのスタンダード《作詞:hyde/作曲:tetsu》であります。成り立ちについては、発売当時のYahoo! ミュージックマガジンのインタビュー記事から抜粋しますと

tetsu:僕が『TRUST』を出したのは、「tetsuはポップな明るい曲ばっかりだ! もう飽きた!」みたいな意見があるんで、もうちょっと深みのあるマイナーな曲も書けるってところを……「お前はこうだ」って決め付けられるってことが人一倍嫌いなんで。だからそこに対するアンチテーゼですよ、『TRUST』は。

つまり「finale」と通ずるイメージだったってことでしょうか、作曲者の意図としては。曲全体の世界観にどこまでtetsuのイメージがあったかは不明ですが、それに歌詞を付けたhydeの方はこんな風に語っています。

hydeなんででしょうね………………無償の愛に気づいたからじゃないですかね、めちゃくちゃ臭いっすけど(笑)。無償の愛、そういう存在があるっていうことを知って、もうそれ以外の言葉を歌にするのはすごくつまらなかったっちゅうか。

これは特に「TRUST」だけについての言葉ではないのですが、「AWAKE」全体についてこう言及している以上、「TRUST」の歌詞もテーマは《無償の愛》と考えてOKかなと思いますよ。無論プライベートを明かさない主義のhydeですから、その《無償の愛》がなんであるかについてはインタビュー中では触れられていませんが…ま、Fanの皆様はご存知でしょうって感じで*3

私が「AWAKE」買った当初、延々とアルバムリピートしつつ、歌詞をあんまり読まずにざくっと聞いていた時には、

「久々に暗めのてっちゃん曲かー。地味やね。でもこの、クールダウン的な位置*4にはちょうどいいねぇ」

みたいなことだけ思ってました。で、「AWAKE TOUR 2005」のLIVEでのエアリエルの演出も格好良かったなーなんて思った後に、歌詞をじっくりと読んでみたら、

「ん? これってもしかして、胎児視点の歌?」

と思うようになったんですよね。(遅) 強引にこじつけなくても、歌詞内の言葉はそう解釈できる要素を多分に含んでいると言いますか…以下に列記してみましたが、なんだか生物あるいは保健体育の教科書のような用語が並んでしまってますので、とりあえず反転にしておきます。(汗) 苦手な方はご注意下さい!

  • 満たした水辺→卵巣、卵管
  • 静かな眠り→未受精の卵子
  • 闇を裂く天の雫→精子の侵入、受精、卵割、着床、胚発生
  • 光のらせん→DNA、特に新たに構築される胎児のゲノムDNA
  • 鼓動に守られてる、優しい調べの中→母胎内
  • こぼれる涙も知らず、泳いでいたい→羊水
  • 冷たい光の扉→産道、子宮口

歌詞の日本語部分で「?」が付いている疑問形のパートは、この世界に生まれ出ようとしている胎児からの問いかけなのではないかと。夢のような世界なんだよね? 優しさや喜びはあるんだよね? と。

ちなみにLIVE時には最後の方、歌詞を変えて歌ってましたよね。参戦時に生で聞いた時には「あれ、CDとちょっと違う?」くらいしか聞き取れてなかったんですが、ネット彷徨ってみたところ、《僕は生まれてもいいの?》だったという意見が優勢のようです。

AWAKE TOUR 2005 [DVD]

AWAKE TOUR 2005 [DVD]

「AWAKE TOUR 2005」のDVD*5で確認したら、私には《僕は生まれて火(灯? 陽?)になろう into the light》と聞こえる気がする…。まぁhyde語を深く追求しても迷路にはまり込むだけなので、LIVEアレンジについてはこの辺にしておきますが、いずれにせよ、ますます胎児からの問いかけっぽい。

その問いを誰に向けて発しているのかというと、《誰かの呼んでる声》の主なんでしょう。《呼んでる声》の内容は、おそらくは歌詞の英語部分。これはもう完璧に《父親の言葉》だと思うんですよ。以下は歌詞の一部抜粋で、『』部分は自己流和訳です。

『光の中へおいで』 その言葉を信じてもいいの?
(中略)
『光あるこの世界へ出ておいで、僕はここにいるから』

hydeは女性視点の歌詞も書くから、いくら男性の手になる作詞だと言っても、この胎児の親を《父親》と決め付けるのは早計かもしれません。でも、

「外へ出ていらっしゃい、私はここにいるわ」

という風な呼びかけは、母親はしない気がするんですよね。想像ですけど*6。まぁ「出ておいで」はあるかもしれないにせよ、「ここにいる」もなにも…妊娠中は、母親はおなかの中の子どもとずっと一緒にいる訳じゃんっていう。

自らの《光のらせん》を受け継ぐ存在である子どもが、外の世界に生まれ出てきてくれないと、会えないのは父親の方。だから《ここ》から繰り返し呼びかける、出ておいで、と。

この世界には光があるから、僕はここにいるから。穏やかな未来ではないかもしれない、争いの炎は消えないかもしれない。でも、僕がここにいる。だからどうかこの声を、君に呼びかける《その言葉》を信じてほしい――出生前の胎児と父親の対話であるこの歌は「TRUST」、信頼、希望、確信といった訳語を持つ言葉が曲名になっています*7。それはきっと父親からのメッセージ、《ここにいる僕を信じて、外の世界に出ておいで》という意味で…。

もちろん、本当にhydeが自らの父親としての心境をこの歌詞に込めて書いたかどうかなんて、単なるいちFanのこちらには判る訳がありません。でも、当時の状況や背景を考えるにつけ、これはそういう歌だと解釈するのが妥当な気がするんですよ。いやー、初めてそこに思い至った時は、畏れというかなんというか、敬虔な気持ちにさせられてしまいました*8

ラルクの1999年のナンバー「Pieces」は、「もしも自分に子どもがいたら」と想像して書かれた詞だったとか。もちろんあれはあれで十分に感動的だったんですけれど、でもやはり、実体験が伴った後の言葉は自然と深くなるというか…「Link」にせよ「SEASON'S CALL」にせよ「MY HEART DRAWS A DREAM」にせよ「SHINE」にせよ、近年のそういった類似テーマの楽曲の歌詞には次元の違った素晴らしさが顕れているように感じられます。つまりそれは、feuilleさんの書かれていたような「父性=男になること」が背景にあるからなのかな、と。

来るべきVAMPSの新アルバムでも、そんな系統の曲に出会えたら嬉しいですね!*9

*1:この時点でもキモいくらい枚数があるので、動画の扱いは決めかねてますが(…)

*2:現時点での最愛作。でもラルクの最高傑作と言いたい訳ではなくて、単純に最も自分好みなラルクのアルバム

*3:にしてもこれ、読んだ時は相当驚きました。えーそこまで言っちゃっていいの!? って

*4:新世界→失楽園→叙情詩と最初からぶっ濃い連続の上に、これの後キリン組!

*5:この東京公演、hydeの声が今イチなのが惜しすぎる!!!! 演出は最高に好きなのに、あまり見返せないのはそのせいです…くっっ。名古屋も大阪もネ申だったのに〜

*6:いえ、父親視点だって完全に想像ですがなにか

*7:なんとなくhydeは「trust」を「believe」よりもよく使う気がする…ということも書こうかと思いましたが、意味の違いなどぐぐってたら考えまとまらなくなってきたので止めておきます←なら書くな

*8:人生何度目かもうわからない、ハイドSUGEEEEEEEEEE!!(笑)

*9:他の系統の曲ばっかりでも喜んでると思いますけどね…